以前、僕が学生アーティストを支援するインディーズレーベルの会合に参加した時の話だ。

みなさん、持続的な活動のためにネットを通じてプロモーションをして音源販売して、音楽活動から利益を得られるようにしましょう!

僕らのバンドはライブハウスで定期的にライブをして、そこで無償で自主制作CDを配布しています。かつてのブルーハーツがデモテープを無料配布して、ライブハウスから火がついてのし上がってきたように。
僕たちのような素人がお金をかけず作った音源でカネ儲けするなんて! 商業主義だ(#^ω^)
あなたは対立するこの2つの意見を、どう考えますか?
(記事タイトルはイケダハヤト氏の著書より)
ライブハウスから売れる時代ではない。
彼が例に挙げたブルーハーツがライブ活動を開始したのは1985年。そこから2年後の1987年に彼らはメジャーデビューシングルの「リンダリンダ」を発売しています。
2018年に同じ手法が通じるかといえば、言うまでもなくNOでしょう。純粋なロックバンドが売れる時代でもないし、バンドブームも過ぎ去って何十年も経ちます。ライブハウスはガラガラ。僕も彼のやっているバンドのライブを観に行きましたが、ぶっちゃけ出演者の友達しかお客さんに来ていませんでした(悪口を言いたいわけではなく、現実問題として世のインディーズバンドのライブ動員なんてそんなもんです)。
CDという媒体を無料で配る意味
「手元にモノとして残るものを」と言っていまだにCDを自主制作するアマチュアミュージシャンは多くいます(僕がやっているバンドもそうなのですが……)。
しかし、それはあなたのバンドのエゴではないですか?
お客さんは、そのCDを手に入れたら、それをPCにインポートしてiCloudなりと同期させて……と多くの手間と労力をかけるわけです。
ミュージシャンはCDは作ったからには聴いてもらいたいはず。しかし実際問題としてCD媒体から音楽を聴く人は殆どいません。タダで貰ったならなおさら「聴くまでもないだろう……」と思ってしまう。
あなたの机の上にもありませんか? ライブハウスや会場の外でタダで配っていた、まだインポートすらしていないCD-R。
ちゃんと印刷所に完パケまでしてもらったプレスCDであればまだいいですが、市販のCD-Rに手焼きでコピーしたあなたのバンドのCDは、実質不燃ごみです。無料配布ならなおさら。
もっとも手軽にリスナーの耳にあなたの音源を届けるのであればYouTubeやSoundCloud、Twitterの埋め込み動画やBASEでのDL販売、ストリーミングサービスなどを利用するのがいいでしょう。
ネットで聴ける音源をわざわざCDからインポートして聴かせるなんて、そんなのただの自己満足なのです。
クリエイティブは消耗する。
作品の原価は0にはならない
「現状、無料配布でやっていけているから大丈夫だ」という声を聞きますが、それは自己欺瞞です。
音楽だけじゃなく芸術などもそうですが、特に日本では「創作力(クリエイティビティ)」が軽視されがちなように思えます。
芸術家の村上隆さんは「世界」という戦場で戦うことを選びました。
たしかに、音楽やイラストなどの制作は、材料がないため原価がないように見えます。そして、価格を設定するにも、制作者の力量や作品の完成度は客観的にしか評価できません。自虐的なまでに遠慮をする日本人はなおさら、自分の作品に高い価格設定をすることを避けてしまう。
しかしそれは、裏を返せば単に「自分の作品に自信がないことに対する免罪符が欲しい」ということにほかなりません。言い訳が欲しいだけ。
先に高めの価格を設定してしまえばしっかりそれに見合うクオリティの作品を目指すでしょうし(制作のために機材を揃える・十分な制作時間を確保するなど)、その価格でも売れるように努力をする(プロモーションを打つ・TuneCoreなどの配信サービスに課金するなど)でしょう。
機材を買ったり、時間を使ったりすればそれは原価(設備費・人件費・宣伝費etc)として計算できます。また、それを基準に利益率を設定し、販売価格を設定する事もできるでしょう。
大切なのは、「音楽に賭ける情熱の数値化」。努力や才能は目に見えないからこそ、目に見える部分は数値化して、戦略的に成長していくべきなのです。
持続可能な音楽活動をする
「別に趣味でやってるんだから音楽で稼げなくてもいい。生活費はバイトで稼ぐ」という意見も聞きます。
でも、それって効率悪くないですか?
やりたい音楽のためにやりたくもない仕事に大切な時間を遣うなんて、ナンセンス。
せっかくなら、やりたい音楽でお金を稼いで、空いた時間で音楽をやればいいのに。四六時中バイトするようなものなんだからもっと稼げますよ。
ネットで音楽を売る方法。
手っ取り早いのは「ココナラ 」や「オーディオストック」の利用。これらのサービスを使えば音源制作などの仕事を受注できたり、あなたの制作した音源の権利を販売できたりします。

(※上記記事より引用)
単価が低いと言われているストリーミングの売上も年々右肩上がりで増加し、ダウンロード販売の売上に肉薄しているといいます。
これからの時代に音楽で戦うには、音楽ストリーミングサービスの利用は不可欠であろう。
インターネット時代の音楽プロモーション
「ネットリテラシー」がモノを言う時代
以前、音楽系Webサービスを運営されていて、ご自身も音楽活動をされている方のお話を伺ったとき、このようなことをおっしゃっていました。

バンドマンはネットが苦手な人がとにかく多い!
彼らにネット活用を説いてもなかなか理解してもらえない……。
これは、裏を返せば「ネットに強いミュージシャンはまだまだ少ない」ということ。
例えば、海外のミュージシャン(ジャスティン・ビーバーなど)はみんなYouTubeやSoundCloudから成り上がっています。
しかし日本ではまだネットから有名になるミュージシャンは少ない。米津玄師さんやDaokoさん、岡崎体育さんなどがそうでしょうが……。
つまり、まだまだミュージシャンがネットから成り上がっていけるチャンスは大いにあるということです。
時代の潮流に取り残されてしまわないように、「新時代のマーケティング」を探っていくべきなのです。
インディーズアーティストが今日からできる! ネット戦略の具体案
では、ネットという舞台でバンドマンやミュージシャンが自らの活動をプロモーションをしていくにはどのような方法があるでしょうか?
①YouTubeからの検索流入を狙う
やはり音楽コンテンツともっとも相性がよく、利用者も多いのはYouTubeでしょう。
でも普通に音源を上げただけではなかなか再生回数は伸びない。かといって、どんな動画をYouTubeに投稿すればいいのかも分からない。
ここで思いつく限り、いくつかアイデアを書いてみます。
1. 人気曲のカバー動画・アレンジ動画を上げる
これは以前の記事でも紹介した「Goose house戦略」ですね。

YouTubeでもっとも検索されるのは発売直後の楽曲。公式動画よりも早くアップロード出来てしまえばかなりの伸びが期待出来るでしょう。

そんな、他人のふんどしで相撲を取るようなマネしたくない!
たしかにその気持ちもわかります。しかし、まずあなたの活動を多くの人にまず認知してもらうことが先決。しっかりチャンネル登録やTwitterのフォローをしてもらった上で、オリジナル曲へのリンクへの誘導も促しましょう。(カバー動画→オリジナル曲→SNSフォローという導線を描く)
もし僕がとても良いカバー動画を見付けたら「オリジナル曲も聴いてみようかな~」と思います。
やはりいきなり知らないアーティストの知らない曲を聴くのは苦痛。とりあえず「知ってるアーティストの知らない曲」までハードルを下げてあげましょう。
2. YouTuberの手法から学ぶ
2018年は「バーチャルYouTuber」の年になってきています。
バーチャルYouTuberとは、簡単に言ってしまうと「CGモデルに声を当てて、YouTuberをする人たち」のこと。
バーチャルYouTuberは、①CGキャラのモデルのデザインをし、②実際にモデリングし、③動くようにプログラミングをし、④モーションキャプチャーのための環境を揃え、⑤声優(高いトークスキル、アドリブスキルを要求される)を起用し、⑥企画立案をし、⑦宣伝をし、⑧スポンサーを探し、⑨高い頻度で更新しなければならないなど、一般的なYouTuberに比べて参入ハードルは非常に高い。
代表的なバーチャルYouTuberにキズナアイさん、ミライアカリさん、ねこますさん、輝夜月さん、シロさん(以上5人を「バーチャルYouTuber四天王」と呼ぶ)、ときのそらさん、猫宮ひなたさんなどがいます(僕は響木アオちゃんが好きです。)
注目すべきは「協働」がYouTuberに採り入れられた結果、YouTuber界に革新が起きていること。
同じようなシステムをミュージシャンに採り入れることもできそうじゃないですか?
たとえばアメリカでは既に「コライト (Co-Write)」といって複数のミュージシャンが協働で1つの楽曲を作り上げることが普通になってきています(例えばブルーノ・マーズ – 24K Magicの作詞・作曲はブルーノ・マーズ、フィリップ・ローレンス、ブロディ・ブラウンの3人)。
もしネットが苦手ならネットが得意な友人と協力したり、MV撮影や出演を人に頼ったり、思い切って誰か他のバンドの人と一緒に曲を作ったり……。今まであまりやられていないことこそ、やる価値はあると思います。
戦略(成功するための計画)と独創的なアイデア、そしてなにより誰よりも早く行動に移す勇気こそが、あなたにいま求められているスキルなのかもしれません。
3. 話題になるようなMV・PVを制作する
OK Goの例ではありませんが、独自のアイデアで注目されるMVを作ることは非常に大切です。KSF(Key Success Factor – 重要成功要因)です。
Twitterでのバズ(拡散)を狙うには、ひと目で面白いと思われるアイデアが大切。
予算がない? 撮影はiPhoneで十分。「iPhoneで撮った」というだけでもなかなか面白いと思いますよ。実際にそのように作られたMVもたくさんあります。
せっかく作ったステキな楽曲、聴かれないのはもったいない。曲を生み出したからには、責任もって育ててあげましょう。
大事なのは発想力と勇気。今日からでもやりましょう。
②Twitterでの拡散を狙う
Twitterでバズることで、ファンを増やした例も多くあります。
ここで今一度「バズり三類型」を確認しておきましょう。
- ネタ型(面白いネタツイートで拡散を狙う)
- ビジュアル型(かわいい・かっこいい要素で拡散を狙う)
- テクニック型(高い技術によって拡散を狙う)
(※下になるほど第三者によるお墨付き(引用RTなど)が付きやすくなる)
(※複数の型を組み合わせるとより高い拡散力を発揮する)
ミュージシャンが使いやすいのはテクニック型でしょうか。シンガーソングライターなら流行の歌をちょっとアレンジしてカバーした動画をTwitterに投稿するとか、どうですか? 星野源さんや米津玄師さんの曲を○○風にカバーしてみた……など。ネタ要素があれば「ネタ型」と「テクニック型」の融合にもなりえます。それでイケメンだったら最強です。
大切なのは「自分がRTしたくなるようなツイートを意識する」こと。あなたが最近RTしたツイートはどんなものだったか、自分でも真似出来ないか考えてみましょう。
③前人未到の手段を見つける(あたらしい需要の創出)
それが出来たら世話ないですよね。
例えば先述のバーチャルYouTuberは「アニメファン層」および「ゲーム実況ファン層」を「YouTuberの舞台」に引き込んで新たな需要を創出することに成功しました(実際、深夜アニメのファンをバーチャルYouTuberが奪っているんだとか)。
米津玄師はハチ名義でニコニコ動画で活躍していた過去から「ボカロファン層」も「邦ロックファン層」も巻き込んでより強大なファンを形成しています。
今まで思いつきそうで思いつかなかったアイデアを見つけ出して、いますぐ実践してみましょう。
ブルハ時代よりもチャンスは転がっている、はず。
インターネットの影響で、誰でも(きっかけさえあれば)ブレイクできる時代です。かつてネットの無かった時代のロックバンドよりも、いくらでもやりようがあると思いませんか?
今は昔に比べてもいい時代だと思っています。ネットによって誰でも世界の情報が一瞬で得られる時代。そんな時代に、スマホネイティブのユーザーたちの時間を何秒奪えるか。それが、今我々発信者側が意識すべき根本的な目標なのです。
以上、サイトウ(@S41T0H)でした。もし当記事を気に入っていただけましたらTwitterのフォローをお願いいたします。損はさせません。当サイトの公式Twitter(@koya_sus)も併せてどうぞ。
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