小沢健二、通称オザケン。渋谷系の王子様と呼ばれた彼が昨年2017年、ニューヨークから帰ってくるやいなや『流動体について』、セカオワとコラボした『フクロウの声が聞こえる』の2作品をリリース。それぞれの楽曲でミュージックステーションにも出演した。
そして年は明けて2018年。満を持してリリースした復帰後3作目のシングルがこの『アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)』である。
今回はその小沢健二を知らない人にもわかりやすく、彼の魅力を紹介したい。
小沢健二とは
現在でもめちゃくちゃカバーされているスチャダラパーとのコラボ曲「今夜はブギー・バック」。日本語ラップが好きな人ならば、加藤ミリヤと清水翔太のやつで知っている人もいるのではないだろうか。
この曲が大ヒットしたおかげで、一般層にも日本語のラップが浸透した。また、今でも多く見られるフィーチャリング文化(feat. ってやつ)を日本に持ち込んだのもこの曲だ。
この曲の影響力は絶大で、日本語ラップのアンセムともいえる「証言」のリリックでも2度もサンプリングされている。
もともとは小山田圭吾とのユニット「フリッパーズ・ギター」で活動していた。「YOUNG, ALIVE, IN LOVE – 恋とマシンガン」が有名だろう。
その後、小山田圭吾はコーネリアスとして、小沢健二はソロで活動し始める。
特にアルバム『LIFE』は名盤中の名盤である。『刹那』も良い。是非聴いてみて欲しい。
彼の音楽は「魔法的」。
そう、彼の(特に復帰後の)音楽は「魔法的」なのである(この「魔法的」という言葉はツアータイトルにも使用されている)。
優美なストリングスとハープの音色が特徴的に使われ、そこには文学的な歌詞が乗る。
どういうことだよ、という人へ。まずは聴いてみてね。
「アルペジオ」について
歌詞に注目。
今回の楽曲「アルペジオ」の歌詞は昨年12月1日、公式サイト「ひふみよ」に掲載されていた。
実に生々しい歌詞である。小沢健二のプライベートを思わせる語り。「下北沢珉亭」は下北沢に今もある、ブルーハーツ甲本ヒロトがバイトしていたことで有名な伝説的中華料理屋である。
ちなみに音源ではその語りの部分はこの楽曲が主題歌で使われている岡崎京子原作の映画「リバーズ・エッジ」に主演している二階堂ふみと吉沢亮が担当している。
あなたはこの曲を聴き歌詞を読んでなにを感じただろうか? 「賢そうで鼻につく」?「駒場図書館とか東大卒かよ」? まあそう言わずに落ち着いて聴いていただきたい。
こう、夢の中に誘われるような不思議な感覚がしないだろうか。
落ち着いたキャンパス、秋の木枯らし、古い喫茶店。そんなどことなくノスタルジックな文学的世界を想像させるだろう。そして、世界の熱量のようなものの、この狭い宇宙の中で確かに流動している有機性のようなものを。
これがきっと彼の描く「魔法的世界」なのだと思う。
……いや難しくてわかんないな。
とにかく、小沢健二は「宇宙と個人」「神と自分」「静と動」「君と僕」「明と暗」のような対立構造からまさしく「魔法的」に音楽世界へと聴く者を没入させる。そんなレトリックに長けた詩人なのである。
カップリングは満島ひかりとのコラボ。
先日Apple Musicで配信されていた小沢健二の番組「Tokyo, Music & Us 2017-2018」の第一回ゲストが満島ひかりで、その時のセッションがこの「ラブリー」で、『アルペジオ』に収録されている音源もこの時のものだ。
この「ラブリー」は小沢健二の代表曲とも言える曲だ。
2018年の今に聴いても色褪せない鮮やかさが、この曲にはあると思う。
あなたは、どう思いますか?
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