今までさんざんさんざんさんざんさんざん「日本で良い音楽が売れない理由は、日本の音楽リスナーの耳が肥えていないからだ!」と、『自称音楽通』の人々が嘆いていましたね。
そんな方々に朗報です。
日本の音楽が徐々に洋楽化してきていますよ。
音数が減っていく邦楽シーン。

みなさん、もう聴きましたか? これ。
宇多田ヒカルがプロデュースを手がける小袋成彬(おぶくろ なりあき)。
彼の1stアルバム『分離派の夏』がついこの間リリースされました。
鳴っている音といえばボーカルの他にはリズムマシンとベースとシンセパッド(ミョ~~~ンと鳴っている電子音)くらいでしょうか。
あとはこれとか。

最近いろんなところで目にするMONDO GROSSO(モンド・グロッソ)。
イタリア人みたいな名前ですが、大沢伸一のソロプロジェクト名。
小山田圭吾のコーネリアスみたいなものですね。
この曲「偽りのシンパシー」はアイドルグループ「BiSH」のメインボーカル「アイナ・ジ・エンド」をゲストに呼んだ曲です。
この曲も(「Lonely One」ほどではないが)音数が少なく、どことなくフランク・オーシャンっぽい。
一方、いわゆるバンド音楽も洗練されてきています。

5人組バンド、PAELLAS(パエリアズ)。
シンセサイザーの音が特に洋楽ですが、グルーヴィーなドラムとベースの創り出すリズムがR&Bチックだし、コード進行もやはり邦楽的ではないのです。
ジャケットも洋楽っぽい。

ほかにもD.A.N.(ダン)など、特に音数を削ぎ落とした「抜きの音楽」を生み出すミュージシャンが増えてきています。
2年ほど前にSuchmosが大成したいわゆる2010年代的都会派シティポップは、さらにリアルな洋楽チックに進化してきているのです。
邦楽が洋楽化してきたキッカケ
邦楽が特に洋楽化してきた理由は、2016年のSTAY TUNEもさることながら、やはり宇多田ヒカルの『Fantôme(ファントーム)』の影響が大きいと思います。

日本人ミュージシャンがここまで洋楽的な音楽をリリースし、日本人に評価される。
これはきっと、日本の多くの音楽リスナーにとっての「私達が楽しめる洋楽チックな音楽が現れた!」という希望になったんだと思います。
宇多田ヒカルがもたらした「邦楽の転換期」
邦楽シーンは「Fantôme以前」「Fantôme以降」と呼ばれるだろう
たとえば、「渋谷系」を大成したピチカート・ファイヴやフリッパーズ・ギター、ビレバン系女性シンガーを量産した相対性理論、複雑なギターリフと叫ぶような歌唱が特徴のナンバーガールや凛として時雨のような、いわゆる「邦楽史の転換点」と呼ばれるようなミュージシャンはかつて多く登場しました。
そして2016年。邦楽に明らかに今までとは違う音楽性のアルバム『Fantôme』が投入され、高い評価を獲得しました。
そこでいわゆる「邦楽の洋楽化」が始まり、2018年の現在、次々と「Fantôme以降」と呼ばれるべきミュージシャンが登場しているわけです。
「Fantôme以降」の動向を予測するなら洋楽を聴こう。
これからの邦楽はますます研ぎ澄まされ、ますます洋楽化していくと思われます。
そこで、どのような進化を遂げていくのかを予想するためにはイマの最先端の洋楽を聴くとよいでしょう。
最先端の洋楽ランキングを知るにはSpotifyのチャートを見ると便利ですよ。
全世界のランキングの他、国別でも見ることができます(フリープランでも利用可)。
ドレイク
執筆時現在、Spotifyのグローバルチャートで1位と3位を席巻していたのはアメリカのラッパー、ドレイク(Drake)の「Nice For What」と「God’s Plan」でした。

この曲、すごいですよね。
一曲を通してほぼリズムトラックとコーラスしか存在しない。
もう音程のある楽器なんて時代おくれということでしょうか。
そしてこちらが第3位の「God’s Plan」。

こちらも音が少ない。
アリアナ・グランデ

グローバルチャート第2位は言わずとしれたアリアナ・グランデですが、彼女もシンプル志向になっているようです。
むやみにオブリガードを入れて音の隙間を埋めようとしない。
休符を大切にしています。
そして三連符でラップをする部分はトラップからの影響でしょうか。
カルヴィン・ハリス

グローバルチャート4位はカルヴィン・ハリスでした。
こちらも、多くの部分がリズムマシン、ベース、エレクトリック・ピアノで構成されています。
テンポは速め、四つ打ちのリズムとなっています。
ポスト・マローン

以前「rockstar」が全世界で大ヒットしたポスト・マローンですが、この「Psyco」は「rockstar」より殺伐としたサウンドではなくなり、むしろ優しい印象の曲になっています。
思えば、以前ほどはトラップブームは落ち着いてきているようですね。
まとめ

音は少なければ少ないほどナウいといわれるようになってきました。
やっとジョン・ケージに時代が追いついてきたようですね。
とりあえず、小袋成彬(おぶくろ なりあき)の名前の読み方さえ覚えてくれれば結構です。
それと、『分離派の夏』は必聴です。「Amazon Music Unlimited」に登録すれば聴き放題です。
ありがとうございました。
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