前回の記事では「大賞・準大賞」のレビューをしました。

今回は2回目としてCDショップ大賞2018入賞作品のレビューをしていきます。では早速いくぜ。
CDショップ大賞2018入賞作品
欅坂46 『真っ白なものは汚したくなる』
こちら、アイドルグループ・欅坂46の初のアルバム『真っ白なものは汚したくなる』。
「真っ白なものは汚したくなる」……?
このアルバム、なんと全40曲収録で「サイレントマジョリティー」や「二人セゾン」、「不協和音」など欅坂の代表曲といえるような楽曲は勢揃い。これ聴いておけばとりあえず問題ありません。
メンバーの語りが印象的な「世界には愛しかない」も収録されていますね。
この鳥肌立つような文学的な詞はさすが秋元康という感じですよね。サウンド面で最強なのは「不協和音」でしょう。
この曲、作曲は早稲田出身二人組音楽ユニット・バグベア。サイレントマジョリティーの作曲も彼らです。
イントロからユーロビート調のシンセが印象的に鳴る。少し間違えば古くてダサい音ですが、この曲ではそのダサさを上手な塩梅で中和している。サビ前の\スパーン/とか、まあダサいですよね。いい意味で。
こういった古い音が逆に新しい時代が来ているのかもしれません。音楽の流行は15~20年周期で繰り返されるといいますし。ユーロビートのリードシンセはまさに不協和音である、すこしピッチをずらした音をオシレーターで作り重ねた音。そういう意味でも不協和音という曲名はまさにドンピシャなのである。この音、デモ段階でもこの音だったのだろうか。だったとするとこの曲に「不協和音」というタイトルを付けた秋元康はスゴい。いや、この曲名を踏まえてこのアレンジにしたのか。どっちだろう。
「不協和音」、シンセが先か、曲名が先か。気になりますね。
あと、個人的にはデモ段階でサビ前の叫び「僕は嫌だ!」が入っていたのか(叫びを入れる想定でデモが作られていたのか)も気になります。教えてください。
てち、バリかわいい。
てち(平手友梨奈)、バリかわいいですね。てち。
おそらく全国民が知っているアンセム「サイマジョ」のスゴさといえば、サビの譜割りですよね。
あのメロに「君は君らしく生きていく自由があるんだ」という言葉を無理矢理はめ込んだ秋元康。カラオケでちゃんと歌えてる人見たことないです。すごい難しい。特に「いきっていくじゆうがっあーるんだー」という、日本語のリズムを完全無視した部分。これをデビュー曲のサビに使うという攻めの姿勢がめちゃくちゃ凄い。かつて展覧会に便器を出品したマルセル・デュシャンのような(例えが不潔ですが)、そんな前衛さを感じてやまない。
ポップソングのサビの鉄則として「分かりやすい短いメロディを反復させる」という手法があるのですが、この曲は完全に真逆を行っている。しかし、妙に頭に残る。裏の裏はまた真なりというような説得力があるのである。
二人セゾンのセゾンはセゾンカードのセゾンではなく、フランス語で季節をあらわすsaisonから。この曲はとにかく歌詞が良い。「春夏で恋をして、秋冬で去っていく」というなんというか大雑把なサビなのだが、哀愁がすごい。
というわけで欅坂46『真っ白なものは汚したくなる』、納得の受賞です。
Suchmos 『THE KIDS』
続いてはSuchmos(サチモス)の『THE KIDS』。一曲目の「A.G.I.T.(アジト)」から「STAY TUNE」へ続く、なんとも素晴らしいアルバムですよね。
「青い鳥のさえずりの聞こえないとこ」というところ、SNS時代を反映していて厭世的でいいですね。イントロのギターリフから始まる感じも、ロックファンの心もグッと掴むようになっていていいですね。
「STAY TUNE」大好きマンも、あれはちょっと……。という人も満足できるアルバムになっていると思います。
僕が個人的に大好きなのが4曲目の「TOBACCO(タバコ)」。トラックの格好良さはさすがのもの、サビの歌詞のいい意味でのしょうもなさが好きです。「有能 奴隷根性 Oh Yeah 小銭勘定」と歌ってカッコいいのはヨンスだけでしょ。どういう意味? クソ混んだ電車でドナドナドナって。
竹原ピストル 『PEACE OUT』
僕の父親もハマっていましたね。CMにも使用された「よー、そこの若いの」。このアルバムには収録されていませんが。
めちゃくちゃな説得力を持つ、泥臭い竹原ピストルの歌声が存分に楽しめるこのアルバム。「例えばヒロ、お前がそうだったように」という実話を元にした楽曲はとても赤裸々で、生生しい。心が動かされてしまう彼のメロディセンスに歌詞の言葉選びの秀逸さ。不器用なようで、しかしその巧妙なソングライティングはドサ回りの賜物か。
上の楽曲はドラマ「バイプレイヤーズ」のエンディングテーマ「Forever Young」。大杉漣さんの遺作となりました。竹原ピストルの深みのある歌唱が心に染み入ります。
CHAI 『PINK』
ネオかわいい、ニューエキサイト・オンナバンドCHAI。ビジュアルもさることながら、楽曲の新しさでも話題になりましたよね。
ゴリゴリのベースラインにノックアウトされてしまいます。ビジュアル面のインパクトのみならず、サウンド面でもバリバリに尖っている。いや、ビジュアルも十分尖っていますね。
双子のマナ・カナは次世代ロック研究所(ジロッケン)のMCを務めることからご存知の方も多いのではないでしょうか。
あ、次回突然少年出るのか。下の記事でも紹介しました。興味あればぜひ。
というわけで、CHAI。Charではない。
ベースの音がゴリゴリしていていいですね。まさにサンズアンプという感じの音。
ギターがセミアコースティックギターなのも良いですね。赤いのかっこいい。
音楽ジャンルもごちゃまぜという感じがたまらん。上の曲はボーカルが無ければ一昔前のロックという感じ。そこに評し難いナンセンスな歌が乗る。シンセはニューウェーブっぽくてカッコいい。ゆるめるモ!にも似た自由さを感じる。

上の曲を聴いて「楽曲自体はシンプルなロックで、ポップでキャッチーなアイコン乗せただけッショ?」と思った諸君。CHAIの凄さはこれからです。
上の曲。歌詞はお腹が鳴った時の音について歌っているだけだが、グルーヴがかっこよすぎる。
ベースがグルーヴィ。こんなグルーヴだせたのか……。カッコいいぞ。スラップしてるし。
ちなみに、マナ・カナはXTC(エックスティーシー)、ベースのユウキはPhoenix(フェニックス)、ドラムのユナはレッチリが好きだとか。そりゃいい音楽作るわな。
これなんて、また違ったテイストで佳い。
ドリーム・ポップという感じのリバーブ深めなメロウなギターサウンドにシンセパッドが乗る。歌メロもキャッチー。
というわけで、ちょっと聴いてCHAIを敬遠していたそこの君。CDを買ってちゃんと聴くのだ。
Hi-STANDARD 『THE GIFT』
メロコア界の生ける伝説、ハイスタことHi-STANDARDの18年ぶりのフルアルバム『THE GIFT』です。
フォーリミやワニマなど今でも日本の音楽界にフォロワーを増やし続けている、ロックバンド。難波章浩の英語の発音がクセになる。
たしかに、最近のメロコアっぽいバンドに比べたらクールさには少し欠けるかもしれません。しかしころ泥臭いアツさ、そして横山健のこのギターサウンドはやはり随一。
これとかちっとも衰えていない。カッコいい。
ハイスタといえばStay Goldですよね。
もう文句なしでカッコいいでしょう。そんなハイスタが復活したとなったら、聴かないわけにはいかない。
このStay Goldも収録されたアルバム『Making The Road』も名盤ですので、まだの方はぜひ聴いてください。
復活したハイスタからの贈り物『THE GIFT』購入は以下のリンクから。
BiSH 『THE GUERRiLLA BiSH』
続いて紹介するのは「楽器を持たないパンクバンド」ことBiSH(ビッシュ)。こちらも女性アイドルグループですね。ゆっふぃーが以前所属していたBiSとややこしい、BiSH。BiSもBiSHもavex traxなんですね(BiSは以前ですが)。ややこしい。
今回のアルバム『THE GUERRiLLA BiSH(ザ・ゲリラ・ビッシュ)』の収録曲はこんな感じ。
YouTubeで再生数第1位の「プロミスザスター」。6曲目に収録されています。
コレほんといい曲。そして女子高生役で出演している田中真琴さんが可愛い。
今日発売の『週刊プレイボーイ』さんに出させていただきました。
新しい私、発見しました🍎
いつも近くにいてくれる皆んなにも新しい私を見てほしいです。
週プレnetには本誌にのってないカットも掲載されてます。
人生初のグラビア撮影、是非見てください〜。
週刊なので急いでーーっ🏃♀️ pic.twitter.com/l4sKL2DG74— 田中真琴 (@mak0tter) 2018年2月10日
尊い。
バンドサウンド+ストリングス、ピアノという感じのアレンジのこの曲。まるでアニメの主題歌のような王道な楽曲。アイドルソングっぽくは、ない。
この曲が凄いのはサビのコード進行の潔さ。基本は4536の王道進行なのですが、4から5に行く時にベースが4のままにいるんですよ。Ⅳ△7→Ⅴ7/Ⅳという感じ。こうすることで進行感が薄れ、曲に安定感が生まれる。よく使われる手法といえばそうなんですが、これがサビにいい味を出しているのです。
こちら、アルバムリード曲「My landscape」のミュージックビデオ。こちらもストリングスが印象的に使用されている。いい声ですね。洋楽みたいなサウンド。開始1分間ずっとドラムレスで曲が進むのもカッコいい。そして歌がうまい。空港での撮影もカッコいい。
こういう楽曲をアイドルグループ名義で発表する、というのが前衛的で良いですね。精神がパンク。
アルバムとは関係ないのですが、BiSHのリードボーカルであるアイナ・ジ・エンドがゲストボーカルとして参加しているMONDO GROSSOの「偽りのシンパシー」という楽曲、めちゃ良いですね。音が洋楽。
アイナ本人によるMVのコンテンポラリーダンスもカッコいい。いい声してますね。
BiSH、アイドルグループだからという理由で聴かないのはマジで勿体無いです。間違いなく良い曲を作っています。必聴。
My Hair is Bad 『mothers』
来ました、マイヘア。ああ、ブラジャーのホックを外す時だけ心の中までわかった気がするバンドね。はいはい。
個人的には、My Hair is Badは、こう、いわゆる邦ロックの大王道の「ナヨッチイ男が生々しい恋愛の曲を歌うバンド」だと思ってたんです。クリープハイプとファンが完全に同じだと。ライブ会場は男子禁制。ファンの方々ごめんなさい。
しかし、この曲でいい意味で裏切られた。
え、こんな曲作るんですか!? 椎木くん、なにがあったんだ。いい子に出会えたようでよかったけれど。
大好きで大切で大事な君には
愛してるなんて言わないぜ
このパンチライン。「愛してるなんて言わないぜ」というのが良いですね。
「言わないんかい!」と聞き手にツッコませるようなサビは、続きも聴きたくなる。
にしても聴いててちょっと恥ずかしくなってしまうな。本音すぎて。まるで、↓
トータス松本が歌ってそう。こういうアツい想いを語る曲って、やっぱり良いですよね。いつの時代でも。
アルバム一曲目の「復讐」。タイトルからしてこれはもしかしてメンヘラけっこう生々しい恋愛ソングかな、と思ったけど、明るい曲! 意外でした。
明るい曲調で残虐な歌詞を歌うのが面白い。ライブ楽しそう。
そしてこれは4曲目の「関白宣言」。
椎木さん髪伸びたなあ。My Hair is Longじゃん。
いかがだっただろうか。
この企画、普段聴かないようなアーティストもじっくり聴くことができて楽しいです。きっとファンが読んだら「なに一丁前に語っているんだ、ニワカ」と思われてしまうかもしれませんが……。
ファンでない方も、いろいろな音楽に触れるきっかけとなれば嬉しいです。
次回はいよいよ「各賞受賞作品(部門賞)」を聴いていきます。本当に普段聴かないクラシックやジャズ、演歌が待ち受けていてちゃんとレビュー出来るかさっそく不安ではあるのですが、とにかくやってみようと思います。
CDショップ大賞、受賞作品は以下のページから。
» CDショップ大賞概要・投票 | 全日本CDショップ店員組合
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