2017年もそろそろ終わろうとしています。後世の音楽史において、きっと「ピコ太郎以後」と呼ばれるであろう(?)、重要な1年であったと思います。
そこで、個人的に大好きな2017年の邦楽アルバム/シングル10枚を集めてみました。
僕が選んだ今年の10枚は以下のとおりです。
- SUNNY CAR WASH『週末を待ちくたびれて』
- MONO NO AWARE『人生、山おり谷おり』
- 集団行動『集団行動』
- フレンズ『ベビー誕生!』
- the peggies『ドリーミージャーニー』
- 小沢健二『流動体について』
- Daoko x 岡村靖幸『ステップアップLOVE』
- TWEEDEES『à la mode』
- Qiezi Mabo『Star Beach Love』
- 桑田佳祐『がらくた』
この10枚について、僕が選んだ理由をつらつらと書いていこうと思います。最後までお付き合いいただければ幸いです。
SUNNY CAR WASH『週末を待ちくたびれて』
しばしばポスト andymori と謳われる SUNNY CAR WASH (サニー・カー・ウォッシュ)。3ピースで、ボーカルが高い声で内省的な歌詞を歌い、やたらと動くベースラインに激しいドラムと、たしかに共通点も多い。しかし、彼ら SUNNY CAR WASH の曲の歌詞は andymori のそれとはまた一味違う。そこで聴いていただきたい、2017年の未確認フェスティバルで審査員特別賞を受賞したそんな彼らの全国デビュー盤がこの『週末を待ちくたびれて』だ。
このアルバム『週末を待ちくたびれて』の収録曲、全部好きなのだが特に2曲目の「ワンルーム」という曲が良い。
狭い部屋に住み付いた悪習慣は
まるで曜日の感覚すらも奪っていくようだ
という歌い出しから
君と僕と君の猫と
過ごした日々が愛おしくて
今日も君の夢を見たの
戻れないのは分かっているけど
というサビの歌詞がきて、一人暮らしをしたことのない僕でもその生活を想像し没入し、寂しくなってしまう。
そう、彼らの曲には一言で言うと「生活感」がある。生乾きのパーカーの臭いがする。 andymori の歌詞はアジア的な異国情緒の感が強かったが、もっと10代から20代に転換する時期の生々しいもどかしさ、焦燥感が彼らからは感じられて、グッとくる。
寂しさを湛えた歌詞と、それを補うほどのポップなメロディラインに心を奪われる、個人的に2017年を代表する曲が、これである。
SUNNY CAR WASH『青春を待ちくたびれて』、名盤だと思います。
MONO NO AWARE『人生、山おり谷おり』
never young beach 、 yogee new waves と来て、この MONO NO AWARE (モノノアワレ)という感じ。めちゃ似ているわけではないけど、同じフィーリングを感じる。
はっぴいえんど直系という感じの気の抜けたボーカルと、インディー・ロックという感じのサウンド、しかしきめ細かい演奏とアレンジ。これがいいんですよね。
特にこのアルバム『人生、山おり谷おり』、 MV のあるキラー・チューン「井戸育ち」に続く2曲目です。この「マンマミーヤ!」、アルバム・バージョンでは音がめちゃ悪い。 iPhone のマイクで録ったようなドラムの音。攻め方が最高。歌詞もマリオ。マンマミーヤってそういう意味かよ、というツッコミがしたくなる。なんだよ、カップヌードゥルドゥーって。咀嚼ネットワークって、なんなんだよ。
集団行動『集団行動』
元・相対性理論のベースであり、 Vampillia もやっている真部脩一と、同じく元・相対性理論のドラムの西浦謙助が、タルトタタンのプロデュースに飽きて最近始めたバンドだ。
タルトタタンといえば、けものフレンズのアライさん役で話題になった小野早稀が(別の意味で話題になった)亀高綾乃と参加していた時期もあることで最近も名前を聞くことがあったアイドル・ユニットだが、今度の集団行動はちゃんとバンドである。
……と思いきや、実質メンバーがボーカルのミス iD 2016 ファイナリスト斎藤里菜と真部脩一、西浦謙助のみなので、バンドなのかというと微妙な気もするが、曲はすげー良い。
相対性理論の(良い意味で)どこかチープでアンニュイなバンド・アレンジと、タルトタタンの明るくポップなメロディやシンセが程よく混ざり合って、相対性理論ともタルトタタンともつかない塩梅のバンドになっている。
特にアルバム『集団行動』最後の収録曲「バックシート・フェアウェル」がいい。「タクシーに乗って 爆心地まで」という韻の踏み方と終末感はさすが真部さん! という感じだ。
相対性理論やタルトタタンが好きで、それでもなにか足りてない気がしていたそこのあなたにぜひ聞いていただきたいです。
フレンズ『ベビー誕生!』
神泉系を自称する、スーパーバンド・フレンズの1stフルアルバムがこの『ベビー誕生!』。メンバーが皆、インディーズ界隈では有名なバンドに所属してるのである。
リーダーでベースの中島涼平は活動休止中の the telephones 、 FINAL FRASH (ラッパーの DOTAMA を擁する)、 megsri で活動、ボーカルのおかもとえみは元THE ラブ人間 (Ba.)、元ボタン工場 (Ba. & Vo.)、科楽特奏隊 (Ba.)のほかソロでも活躍。スマホアプリ「 paymo 」のCMソングを耳にした人も多いのではないだろうか。ラップとキーボードのひろせひろせは nicoten (Ba.)のほか、アイドルや SHE IS SUMMER に楽曲提供もしている。ギターボーカルの三浦太郎は元パワーポップバンド HOLIDAYS OF SEVENTEEN (Gt. & Vo.) でナードマグネットとの親交も深い。ドラムの SEKIGUCHI LOUIE は元 The Mirraz (Dr.)、 SMTM (ソムタム)(Dr.)にも参加している。
ライブめちゃくちゃいいです。ポップで楽しくて可愛い。そしてこのアルバム。一曲目の「ビビビ」は先行シングルにもなっているキラーチューン。MV も可愛いです。
渋谷系とはまた少し違う、神泉系のフレンズ。渋谷から京王井の頭線で一駅、旅してみませんか?
the peggies『ドリーミージャーニー』
「グライダー」や「LOVE TRIP」で話題になった the peggies (ザ・ペギーズ)。ギターボーカルの北澤ゆうほのかわいさが取り上げられがちですが、個人的にはベースの石渡マキコさんを推しています。だって、サンダーバード・ベース使ってるんですよ。かっこよくないですか?(下のMVでは使っていないけど) 一度ライブを見たときにやっていたのがこのドリーミージャーニーでした。TVアニメ「BORUTO -ボルト-」のEDにもなっているんですね。
CDのジャケットにはマンガ家でオモコロライターの小山健が描いたペギーズの3人が登場するマンガが載っていて、これまた可愛い。「ツキイチ! 生理ちゃん」が好きで毎回読んでます。 Twitter に載せている育児マンガも好き。
肝心の曲ですが、ポップなボーカル・ラインにしかしポップにはなりきらないコード進行が絶妙にマッチ。ベース・ラインやドラム・アレンジはガールズ・バンドのそれとは一線を画すパワフルで凝ったもので、それも楽曲の聴き応えに貢献しているのです。ただのガールズ・バンドだと思ったら侮るなかれ。必聴です。
小沢健二『流動体について』
いままで若手バンドばかりを紹介しましたが、ここからは打って変わって古株を紹介します。90年代渋谷系を代表する大天才で王子様、小沢健二が19年ぶりに出した新曲「流動体について」。今年とても話題になりましたね。オザケンといえば現在ソロユニット コーネリアスで活動する小山田圭吾と結成したネオアコバンド フリッパーズ・ギターを解散して、90年代、日本語ラップの革命児と呼ぶべき大名曲「今夜はブギー・バック」や現在もカバー・バージョンがCMソングに使われる「ラブリー」、大作「ぼくらが旅に出る理由」など、多大なミュージシャンに影響を及ぼした後、人気の絶頂で突然NYに渡米したことも話題になりました。
そんなオザケンが2017年、突如リリースしたのがこの「流動体について」。哲学的な歌詞や次々と転調する構成、複雑なサウンドなど、ポップセンスはそのままに、さらに進化した曲となっています。コーラスには一十三十一(ヒトミトイ)を起用したり、MVにはよゐこの有野晋哉やでんぱ組.incの夢眠ねむが出演したりと、ちゃんと今の時代に適応する、2017年でもしっかり生きた曲になっているところもオザケンの「上手さ」なのだと思います。
個人的にはカップリングの「神秘的」という曲が本当に好きで、自分の葬式で流してほしいと思うほどです。よろしくお願いします。
このあとリリースした「フクロウの声が聞こえる」は SEKAI NO OWARI とコラボして、それもまた良かったですよね。Fukase の声とマッチして、また新たなストーリー・テリングの可能性を提示されているような気がしました。
Daoko x 岡村靖幸『ステップアップLOVE』
こちらも90年代 J-POP の大天才、岡村靖幸の新曲です。ニコニコ動画出身の歌手/ラッパーである Daoko とのコラボ作。Mステにも出ていましたね。覚せい剤で3度も捕まったのにテレビに出れるのは岡村靖幸のその才能がゆえだと思います。岡村靖幸といえば「だいすき」や「カルアミルク」などが有名ですが、その独特のコードワークやメロディ作り、そしてクセの強すぎる歌唱は随一。誰にも真似出来ないと思います。
Daoko は今年、同じくニコニコ動画出身の米津玄師(ハチ)とのコラボ曲で映画の主題歌になった「打ち上げ花火」も話題になりましたよね。これもよいのですが、やはり岡村ちゃんとのコラボを推したかったのでこれを選曲。
サウンドは Daoko に寄った(?)バキバキの音作りなのですが、メロディのクドさは岡村靖幸の感が強く、それらがうまく融合されて何とも言えない塩梅になっているわけです。岡村靖幸の個性が強すぎて Daoko のラップが若干オマケになっている感は否めないのだけれど(笑)。
TWEEDEES『à la mode』
渋谷系の伝説的バンドCymbalsの元ベーシスト、沖井礼二とシンガーソングライター清浦夏実の2人組ロック・バンドTWEEDEESの 3rd Album『à la mode』。TWEEDEES には、Cymbals の良さを最大限継承した上でさらに小洒落た感じのイメージを持っているのですが、いかがでしょうか?
Cymbals から続く、目まぐるしく臨時転調するコード進行を跳ね回るベースラインに、爽やかなボーカルが乗っかる。ポップセンスの塊のような曲がこの表題曲の「à la mode」。これもよいのですが、おじゃる丸の ED のカバー「プリン賛歌」も良いですよ。必聴!
Qiezi Mabo『Star Beach Love』
ここでなぜあえて、Qiezi Mabo(チェズマボ)なのか。それは僕がおそらく今年一番聴いた HIP-HOP だからだと思います。
突如現れた謎のラッパー Qiezi Mabo が発表したこの「Star Beach Love」。トラックもリリックもめちゃくちゃかっこいい。ドープ。
その正体は一説には Qiezi Mabo のプロデューサー Giorgio Givvn(ジョルジオ・ギヴン、 HIP-HOPユニット LowPass
(Rap) )ではないかとまことしやかに囁かれている。いや、そうだろ多分。
聴けば聴くほどクセになるこの「Star Beach Love」。韻の踏み方が本当にツボで、新曲が聴きたいなぁと思ってたら、なんと PUMPEE とコラボしてました。
まじで意味分からない曲になっていて最高。
2018年もQiezi Maboから目が離せない。
桑田佳祐『がらくた』
言わずと知れた、サザンオールスターズ桑田佳祐の最新ソロ・アルバム『がらくた』を紹介しよう。
桑田佳祐はもちろんサザンオールスターズでの楽曲も最高なのですが、ソロでの曲は好き勝手やっていて、特にアレンジでメチャクチャ遊んでいる。アルバムについてくるライナーノーツでも、桑田がいかにこだわりを持ってアレンジしているかが伺えて楽しい。NHKの朝の連続テレビ小説「ひよっこ」に使用された「若い広場」を始め、UCCのCMソング「大河の一滴」やJTBの「愛のプレリュード」「オアシスと果樹園」、WOWOWの「愛のささくれ ~No body loves me」「ヨシ子さん」やドラマ主題歌「Yin Yang」など、粒ぞろいのアルバムとなっている。
特に桑田節が炸裂しているのが8曲目の「サイテーのワル」で、歌詞は2017年を揺るがした「ゲス騒動」を彷彿とさせるもの。歌詞の一部を引用すると、
暗証番号 口座番号
メールもLINEもバレる
性癖も生い立ちも
全部割れていた女性(おんな)関係 因果関係
個人情報が暴かれ
そしてある事 ない事
書き立てられたよ
というふうに、まさに「文春砲」について歌われているのである。ついに歌詞に「LINE」を入れたか、桑田…。また、2番以降の歌詞では「ゲスな本性」や「ウィキペディア」などの歌詞が入り、やりたい放題。そして曲もブルージーでカッコいいのである。さすが、桑田。
ということで、桑田佳祐『がらくた』、必聴です。
総括
いかがだっただろうか。2017年は聴き応えのあるポップソングがニューフェイスなミュージシャンからも古株なミュージシャンからも多数リリースされた。特に小沢健二や岡村靖幸などがMステに出演し、活動を再開したことは特筆すべきことだと思われる。いよいよ2018年。ますます邦楽アーティストたちの動向から目が離せない!
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